落下衝撃の基礎シリーズ(3)適正包装設計を支援するための試験機器
包装には、製品の保護、情報伝達正、利便性など様々な機能が求められています。ここでは、製品の保護を中心とした「適正包装設計」と、それに関わる試験・調査について見ていきましょう。
適正包装とは?
適正包装設計というワードはよく聞きますが、どのような包装のことでしょうか?
A.適正包装は、JISZ0108:2012「包装-用語」のなかで、以下のように定義されています。
番号:1023
用語:適正包装(対応英語(参考):appropriate packaging)
定義:下記
「省資源,省エネルギー及び廃棄物処理性を考慮し,合理的で,かつ,公正な包装。輸送包装では,流通過程での振動,衝撃,圧縮,水,温度,
湿度などによって物品の価値,状態の低下を来さないような流通の実態に対応した包装をいい,費者包装では,過剰包装・過大包装,ごまか
し包装などを是正し,同時に欠陥包装を排除するため,保護性,安全性,単位,表示,容積,包装費などについても適切である包装をいう。」
以降は、上記赤字の輸送包装を対象として話を進めます。
まず適正包装の対となる概念として、「過剰包装」と「欠陥包装」があります。
過剰包装とは、不必要に多くの緩衝材を使った設計で、包装材料の使用量やコストが増加する課題があります。
欠陥包装とは、使用する包装材料が少なすぎて、流通過程のなかで製品が破損してしまう包装仕様です。
以上より、適正包装とは、
- 必要最小限の包装材料を使用しながら、
- 実際の流通ハザードを把握したうえで設計された、
- 内容品(製品)を確実に保護できる包装仕様
適正包装設計を試験機器が支援
具体的にどのような手順で設計すれば、適正包装になるのでしょうか?
ここで、外力の大きさは、貨物が流通工程で遭遇する落下衝撃や振動であり、製品の強さとは、包装内の製品自体の機械的強度です。 包装の保護性が大きすぎる場合は過剰包装となり、小さすぎる場合は欠陥包装となります。
以上より、包装の保護機能が適正である条件とは、外力の大きさに対し、製品の強さを考慮し、安全余裕をもって設計されている状態となります。 すわなち、適正包装の実現には、外力の大きさ、製品の強さを数値化したうえで、必要最低限の緩衝材料で製品を保護しなければなりません。
まず、外力の大きさは、輸送環境記録計を用いた輸送環境調査にて、実際の流通工程で生じている振動や衝撃を数値化し、そのデータから包装貨物試験条件を開発します。
次に、製品の強さは、JISZ011に定められた衝撃試験方法により、製品の耐衝撃限界値(許容加速度)を求めます。
その後、包装設計では、緩衝材料特性データ(クッションカーブ)を用いて、包装落下試験にて許容加速度以下になるよう設計されます。このときクッションカーブはJISZ0235に基づいた緩衝材料試験にて 数値化できます。
最後に、安全余裕は、包装貨物試験(落下試験、振動試験、圧縮試験など)を実施し、包装設計の安全性を確認します。このとき、輸送環境調査で開発された 包装試験条件を用いることで、より実際の流通環境に近い環境が再現され、適正包装の実現に貢献します。
このように、適正包装設計のためには、様々な試験や調査にて必要なパラメータを数値化し、理論・根拠に基づく設計・試験を行うことが非常に重要と言えます。
適正包装設計には単に緩衝材だけでなく、実輸送の環境や中身の製品の強度も必要であることがわかりました。この考え方を参考に、自社の包装設計の考え方や方法を見直してみたいと思います。ありがとうございました。
落下衝撃の基礎シリーズ
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