包装設計
今日の「包装」には、内容品の保護、流通性、販売促進性など多種様々な機能が求められています(Table1)。
保護機能は、包装の根源的な機能として非常に重視されている項目です。ここでは、この保護技能について述べます。
【Table1】包装に求められる機能
貨物質量 | 調査区域 |
内容物保護 | 流通ハザードからの内容品保護 |
流通性 | 荷扱い&管理保管のし易さ |
販売促進 | 美称性、内容品情報提供 |
ユニバーサルデザイン | 開封性、安全性 |
経済・環境性 | 3R、包装材料のミニマイズ化 |
さて、すべての包装貨物は、その物流過程において様々なハザードに遭遇しています(Table2)。
ハザードとは内容品および包装貨物が破損する危険性のある外力のことを指します。これらハザードに遭遇しても、包装の保護機能によって内容品を保護しなければなりません。
特に機械的ハザードに対しては、それぞれの物流モードで異なる特性のハザードが発生しており、これら物流モード別に保護機能確認のための試験が実施されています(Table3)。
【Table2】物流ハザードの種類
貨物質量 | 調査区域 |
機械的条件 | 振動、衝撃、静荷重など |
気象的条件 | 温度、湿度、気圧、光など |
化学的条件 | 錆び、酸化など |
生物的条件 | カビ、害虫混入など |
【Table3】物流モード別ハザードと評価試験
ハザード種類 | 発生モード | 発生源 | 評価試験 |
振動 | 輸送 | トラック、船舶、航空機、鉄道 | 振動試験 |
落下衝撃 | 荷役 | 人手、機械(フォークリフトなど) | 落下試験 |
静荷重 | 保管 | 段積み保管 | 圧縮試験 |
このように、包装保護機能は、内容品を保護することがその目的ですが、単純に緩衝材料を大量に利用するだけでは、経済環境性を満足しません。
ここでは、保護機能と経済性を両立するための設計技術について解説します。
緩衝包装設計の考え方
包装による保護機能と経済性を両立する包装を、ここでは適正包装と呼称します。以降は、この適正包装の考え方について説明します。 Fig.1 は適正包装の概念図であり、外力と包装の保護機能、製品の強さによって構成されます(本図はJIS-Z-0200付属書JAから抜粋)。
外力とは物流時に発生するハザードであり、トラック荷台振動や荷役時の落下衝撃の大きさを意味します。ここで図中の矢印が大きいほど外力が厳しい、あるいは強度が高いことを示しており、包装貨物(製品が包装された状態の貨物)の全体強度は、製品自体の強度と包装強度の総和で定義されます。
このときの適正包装の条件とは、輸送ハザードレベルに対し、製品強さと包装の保護性に安全余裕を上乗せした状態であり、この場合において、包装保護機能と経済性が両立することになります。
Fig.3 輸送環境記録計
輸送調査
ステップ1では、Fig.3のような輸送環境記録計が利用されます。これは、3 軸加速度ピックアップ、温湿度センサが内蔵された小型データレコーダで、記録計単体で輸送中に発生する振動・衝撃事象や温湿度の変化を測定することができます。
得られる加速度データは、時系列加速度波形(通常、サンプリング周期は1ミリ秒程度)として記録計内部メモリに逐次保存され、専用解析ソフトウェア上でデータ解析が行われます。
衝撃強さ試験
ステップ2では、衝撃試験装置を用いて、JIS-Z-0119「包装及び製品設計のための製品衝撃強さ試験」に沿った試験を行うと、損傷境界曲線(Damage Boundary Curve, DBC)が得られます。DBCは横軸を入力パルスの速度変化、縦軸がその最大加速度で図示されます。
製品の損傷領域はL字のカーブで得られ、これにより製品に対しどのような衝撃パルスが発生すれば破損するかが理解できます。
緩衝材試験
緩衝設計を行うためには、利用する緩衝材の特性を把握しなければなりません。ここでは緩衝材の特性データを得るための試験装置、試験方法と得られるデータの利用方法について解説します。
左図は緩衝材用試験装置であり、試験方法はJIS-Z-0235「包装用緩衝材料-表か試験方法」に従って実施されます。このとき得られる結果は、静的応力-最大加速度線図(クッションカーブ)となります。
クッションカーブは横軸に静的応力(kgf/cm², Pa)、縦軸に加速度を示しており、落下高さ別に緩衝材厚さごとのグラフで得られます。
包装貨物評価試験
最終評価試験として、落下試験、振動試験が行われます。落下試験は左図のような試験装置を用いて、ステップ1輸送環境調査にて得た落下高さにて落下試験を行い、製品が欠損していないかなどを確認します。
このとき、加速度計測システムにて内容品(剛体部分)に発生する加速度計測を行い、ステップ2製品強さ試験で得られた許容加速度以下になっているかどうかを確認します。