加速度計測
物体が自由落下して床面に衝突すると、物体が床面を下方向に押す力が発生すると同時に、同じ強さで物体を押し返す上方向の力が生じます。このとき、発生する力は、落下高さが高いほど大きくなり、物体が軟らかければ軟らかいほど、小さくなることは、直感的にイメージできると思います。
このように物体に動的な力が加わると、物体には加速度が発生します。この加速度の大きさは、物体に作用する外力に比例し、物体の質量に反比例します(外力が大きいと、加速度も大きくなる、質量が大きいほうが加速度は小さい。Fig.1)。つまり、物体に発生した加速度の大小がわかれば、物体の状態(安全なのか、破損する危険があるのか、など)を理解することに繋がります。
ここで機械的試験分野においては、製品や試験機など対象物に発生する加速度を計測することで、試験の管理が行われており、一般に、加速度ピックアップ(センサ)を対象物に取り付けて、そこに発生する加速度が数値化されます。
これにより、例えば落下試験では、落下物が落下時に破損する危険性があるかどうかを定量的に判断したり、衝撃試験においては、各種衝撃試験規格に準じた試験が実施できているかどうかが確認できます。
ここでは、これら機械的試験分野における加速度計測の基礎について解説します。
加速度計測の基礎
製品設計に関わる評価試験の加速度計測は、大きく2つのシーンに分けられます。(Fig.2)
1つは試験室内で落下試験や衝撃試験、振動試験を実施する際の加速度計測(室内計測)であり、他方は実際の物流環境(トラック輸送や荷役作業現場)で発生する振動や衝撃の加速度を計測することです(室外計測)
加速度計測システム
ここでは、室内計測のための加速度計測システムについて説明します。
加速度計測システム(ショックマネージャ、Fig.3)とは、加速度ピックアップを複数接続できるハードウェアと、PC上で波形解析を可能にするソフトウェアで構成されています。
輸送環境記録計
室外計測のための計測装置として、輸送環境記録計(DER1000,Fig.5)があります。これは、3軸加速度と温湿度が計測できる小型記録計で、電源や制御基板が内蔵されており、記録計単体で加速度の計測と記録が、長期間行えます。
記録された加速度データは、PCにインストールされた解析ソフトウェア上で、加速度波形の確認、各種解析(頻度解析、落下高さ解析、PSD解析、GPS連動)が行えます。