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神栄テクノロジー株式会社
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インタビュー

衝撃試験を活用した研究開発で地域企業の課題解決に貢献

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富山県産業技術研究開発センター 機械電子研究所 様 (http://www.itc.pref.toyama.jp)

富山県産業技術研究開発センター 機械電子研究所は、富山県内のものづくり企業の技術支援を行う中で、衝撃試験機が活用されています。今回、衝撃試験機の活用事例として、具体的な取り組み内容について取材しました。

富山県産業技術研究開発センターについて

---富山県産業技術研究開発センターについての取り組みについて教えてください。

 富山県産業技術研究開発センター(以降、当センター)は、富山県の研究機関として、ものづくり研究開発センター、生活工学研究所、機械電子研究所の3つの拠点を持ち、富山県内企業に対して研究開発支援、技術指導、情報配信、人材育成などに取り組んでいます。

 近年では、富山県ものづくり産業未来戦略に従い、「グリーン」、「モビリティ」、「デジタル技術基盤」、「医療・バイオ・ヘルスケア」の成長分野を対象として、セルロースナノファイバーやバイオマスによる複合素材開発、車載二次電池用複合電極端子の開発などの研究開発実績があります。

 また当センターの活動状況は技術情報誌「TTinfo」(年2回発行)や富山県産業技術研究開発センター研究報告(年1回発行)のなかで公開され、ホームページやメールマガジンでも発信しています。さらに、研究成果や新規設備を紹介する「産業技術研究開発センターテクノシンポジウム」も毎年開催しています。近年はオンライン会議システムも取り入ており、より多くの企業への情報提供を行っています。

富山産技研
富山県産業技術研究開発センター 機械電子研究所

機械電子研究所の取り組み

---機械電子研究所の特徴や業務内容について教えてください。

 当センター拠点の1つである機械電子研究所(以降、当研究所)では、企業の製品開発における設計工程や新材料開発のDXを推進し、設計精度の向上や開発期間の短縮を通じて、ものづくりの生産性向上を支援することを目的として、依頼試験、技術相談、共同研究などの業務を行っています。 依頼試験では、表面元素分析、X線CT、振動試験、材料試験、冷熱環境試験、電気計測、CAE解析ソフトウェアなどがあり、このうち落下衝撃試験は、振動試験では対応できない、大きな加速度が要求される試験に活用しています。

富山産技研 富山県産業技術研究開発センター 機械電子研究所内 衝撃試験機MDST-300

落下衝撃試験機の活用例

---衝撃試験機は、実際の業務のなかでどのように活用されていますか。

 当研究所が保有する落下衝撃試験機(神栄テクノロジー製MDST-300、高加速度発生装置HGP-150)は、最大加速度範囲が30G~10,000G※1と広範囲の衝撃試験ができる機種で、依頼試験や共同研究などに活用しています。

 依頼試験で実施される衝撃試験は、主に電子部品(IC部品、半導体部品、抵抗、コンデンサ、などの基板実装部品)の評価が多く、企業が自社で試験機を保有していなかったり、自社保有試験機では実施できない場合(新しい試験条件や試験機故障時など)に、当研究所の試験機が利用されています。このなかで一部の企業からは、衝撃波形の精度(許容差)が厳しく要求される場合もありますが、当研究所ではこのような要求にも丁寧に対応し、また落下衝撃試験機側もこれらに対応できる仕様となっています。このことは企業からも高く評価されており、同じ企業から繰り返し依頼試験を受けることもあります。

 衝撃試験が実施される背景は、企業が製品を納入する先の相手企業が指定する衝撃試験要求にクリアする必要があるためです。このような場合の衝撃試験方法は、最大加速度と作用時間が決められた一定条件の衝撃波形を与える方法が一般的です。

 一方で、衝撃試験は製品の市場破損の故障解析目的で実施されることもあります。この場合には、どのような衝撃波形で製品が破損するか、その限界値を見極める必要があるため、一定の衝撃波形ではなく、様々な衝撃条件に基づく衝撃試験が必要となります。当研究所が保有する落下衝撃試験機は、幅広い条件の衝撃波形を発生できる仕様であるため、このような故障解析用途にも適しています。

 さらに故障解析を支援するソリューションの一つとして、落下衝撃試験機と高速度カメラを組み合わせたシステムを構築しました(下図参照)。このシステムを利用すれば、衝撃を受けた製品がどのように挙動するかを動画で確認することができるため、製品の破損原因の早期発見や効率的な設計開発への貢献が期待されます。

※1 機械電子研究所 材料製品試験設備WEBサイト
http://www.itc.pref.toyama.jp/equipment/e_data/1333_r4_rakkasyougeki.html
http://www.itc.pref.toyama.jp


富山産技研
落下衝撃試験機」を用いた固有振動数の測定
画像引用:http://www.itc.pref.toyama.jp/consult/setsubi/setubiriyou_doc/rei2_rakkasyougeki.pdf, http://www.itc.pref.toyama.jp


落下衝撃試験機を活用した研究開発

 さらに、当研究所では落下衝撃試験機を用いた研究開発にも取り組んでいます。その一例として、富山県内企業とともに実施した共同研究事例として、電子部品(フェライトコア)の衝撃耐久性向上のための基礎研究※2があります。 本研究は、航空宇宙産業用途で要求される高い衝撃加速度の衝撃試験にも耐えるフェライトコアの実装設計に向けて、シミュレーション解析ソフトウェアを活用することで、耐衝撃性能の高い構造設計につながることが示唆されました。

富山産技研

※2 富山県産業技術研究開発センター研究報告No.38(2024)
https://www.tips-toyama.jp/_wp/wp-content/uploads/2025/03/66.pdf
http://www.itc.pref.toyama.jp


試験設備のさらなる活用による課題解決への取り組み

---今後の取り組みや活動について、お考えを教えてください。

 今後の取り組みの一つとして、企業が抱える課題に対し、より幅広い解決提案ができるよう、さらなる試験技術力の向上に努めたいと考えます。既にご紹介したように、当研究所は、さまざまな計測器、試験機を保有しています。これらツールを組み合わせ、総合的に活用しながら、より効率・効果的な試験・計測を実施するための新技術の開発とともに、新しい試験技術ノウハウ、知識・情報を蓄積していくことで、県内企業の発展に貢献していきたいと考えています。
富山産技研
衝撃試験機の操作風景

※本内容は2025年8月時点の情報に基づいています。



今回採用された試験機

衝撃試験機 MDST-300:詳細仕様はこちら

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