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神栄テクノロジー株式会社
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インタビュー

試験装置の活用により包装設計の適正化を実現

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セイコーエプソン株式会社様は、時計製造を源流にインクジェットプリンターやプロジェクター、ロボット、ウェアラブル機器を製造する精密機器メーカーです。

今回、試験装置の有効活用による適正包装設計化の成功事例として、セイコーエプソン株式会社 プリンティングソリューションズ事業本部 P商業・産業企画設計部 課長 竹下 三四郎様に、具体的な取り組みや成果などについて伺いました。

適正包装設計のための3つの取り組み

---包装は、輸送中に発生する振動や衝撃から製品を保護し、安全にお客様に届けるためには無くてはならない重要な役割があります。竹下様の部門では、一般的な家電量販店で販売されているような製品やビジネス向けの複合機のほか、レシートプリンターや複写伝票用プリンター、大判プリンターと呼ばれる図面やポスターを印刷するプリンター、布に直接印刷するプリンターなどの様々な製品の包装設計を担当されています。どのような点を意識しながら設計業務に取り組まれているのでしょうか。

竹下様 :当社での包装設計業務において工夫している点は、主に以下の3点です。

1つ目は、包装設計前には、製品の衝撃強度を確定したうえで、理論に基づく包装設計を進めています。従来は、製品衝撃強度が不明確なまま包装設計を行っていたため理論に基づく計算ができず、設計時間や包装コストが増加する要因になっていました。現在では衝撃強度(損傷境界曲線)を明確にすることにより、課題を解消しています。

2つ目、新製品開発時に、製品設計と包装設計が同時に開発する体制を採用していることです。従来は、製品が完成したのち、包装設計を行う流れでしたが、これだと包装設計側から製品設計に対して変更要望が出たとしても、製品の再設計は困難であるため、どうしても包装設計に負担が生じていました。そこで、設計体制を見直し、製品設計途中でも包装設計側から様々な要望を出すことが出来るようにし、製品設計者と包装設計者の協議のもと、より効率的な包装設計が実現できるようになりました。このとき、製品設計者と包装設計者の間では、製品の衝撃強度を共通の設計指標としています。たとえば製品破損が発生したとき、製品側で設計見直しを行うか、包装による対応とするかの議論が生じた場合、製品の衝撃強度があれば、合理的な判断を下すことが出来ます。

3つ目に、自社の流通経路で生じる物流ハザード(物流過程で発生する振動や衝撃のこと)の数値化による包装試験条件の適正化です。一般的な包装貨物試験は 、JISやASTMなど公的試験規格をもとに実施することが多いですが、このような規格にある試験条件は、自社の物流環境を十分に再現できる試験条件になっていないかもしれません。そこで、輸送環境記録計 を用いて、自社の輸送ルートを数値化し、その結果から包装試験条件を設定しています。

これらすべての取り組みに共通する設計思想として、理論や数値に基づく設計を行う、ということがベースになっています。

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包装設計対象製品の一例

製品の衝撃強度が必要となる理由とは


---適正包装設計の取り組みの中で、製品の衝撃強度(損傷境界曲線)を把握することが重要であると感じましたが、包装設計になぜ製品の衝撃強度が必要となるのでしょうか。

竹下様:包装設計は、はじめに緩衝材の厚みや受圧面積を決めることからスタートします。このとき、緩衝材を多く使いすぎると、過剰包装となり無駄な包装コストが生じてしまいます。一方で、緩衝材が少なすぎる場合には、製品輸送中に製品が破損する欠陥包装となり、市場クレームが発生してしまいます。適正包装設計とは、必要最低限の緩衝材でありながらも、製品を確実に保護できる包装仕様です。私たちは常に適正包装設計になることを意識しながら、設計業務を行っています。

ここで、製品がどの程度の衝撃加速度で破損するかが明確になっていれば、それに応じた適切な緩衝材使用量を理論計算することができ、適正包装設計の実現に寄与します。もし製品の衝撃強度がわからない場合には、どこまで緩衝材を使えばいいかの判断ができず、過剰包装や欠陥包装になってしまうリスクがあります。

このように製品の衝撃強度を明確にしておくことは、理論的な包装設計ができるベースとなっているため、適正包装設計には欠かせません。さらに理論設計ができることで、包装貨物落下試験でも失敗が少なくなり、包装設計時間の短縮化にもつながります。また個々の包装設計者のノウハウに依存せず、だれでも高品質な包装設計ができるようになるため、包装設計業務の効率・品質が向上します。

高精度な試験が適正包装設計 を支援


---さらに 適正包装設計の実現には、各種試験装置の活用が欠かせない、と竹下様は語ります。

竹下様:たとえば、製品の衝撃強度を調べるためには、衝撃試験を行います。この試験では、製品に様々な衝撃加速度を与え、どの条件で製品が破損するかを確認します。このとき、発生させる衝撃加速度の精度が破損結果に影響するため、再現性の高い衝撃加速度を発生できる衝撃試験装置を利用しています。ここで得られた衝撃強度データは、包装設計の適正化だけでなく、製品自体の構造設計の見直しにも活用しており、壊れにくい製品開発にも大いに役立っています。

また設計された包装貨物は、緩衝性能が設計要求を満足しているかどうかを確認するため、包装貨物落下試験が行われます。一般的な落下試験方法は、包装貨物を自由落下させる手法ですが、当社では衝撃試験装置による等価落下試験方法を採用しています。これは、等価落下試験が自由落下試験に比較して、落下衝撃ダメージをより正確に再現できるためです。このことは、社内で実験的にも確認できており、有効性の高さを実感しています。
加速度計校正 このように、包装設計の適正化の実現には試験装置の活用が必須と考えます。

一方でこのような試験装置の導入には、社内の理解を得ることが必要です。そこで、試験設備を一時的に利用できる神栄テクノロジーの受託試験サービスを利用し、実製品にて実験を試みました。その結果、衝撃試験装置を使用することで、確実で無駄のない包装設計が可能であることがわかり、試験結果と理論的な説明を社内で行い、試験装置の導入に至りました。

今後の包装への取り組み


---様々な観点から包装設計の適正化に積極的に取り組まれていますが、今後の包装に対する取り組みについてもお聞かせいただけますか。

竹下様:現在、包装は環境対策が大きなテーマになっており、これまでに使用したことのない新しい緩衝材を利用していくための取り組みを進めています。

その1つの成果として、弊社のドライファイバーテクノロジーを利用した緩衝材(2023日本パッケージングコンテストでジャパンスター賞「公益社団法人日本生産本部会長賞」を受賞)を開発しました。これは、社内の古紙回収システムで収集した使用済コピー用紙を原料とし、水をほとんど使わずに作製した緩衝材で、環境に配慮した包装を実現しています。

この緩衝材の大きな特徴は、他の紙系緩衝材とは異なり、緩衝理論設計ができることにあります。代表的な紙系緩衝材の一つにパルプモウルド緩衝材がありますが 、この素材は理論計算に基づく包装設計が難しく、どうしても勘と経験に頼る側面が多くなります。一方で、当社が開発した 緩衝材は、緩衝材データから理論計算して設計できることが大きなメリットです。

また緩衝材厚みや受圧面積も、製品の大きさや重さに応じて自由に加工しやすいことも特徴です。そのうえ、紙系緩衝材の弱点である水分にも強い特性となっており、高湿条件でも緩衝特性が大きく変化しないため、包装設計に利用しやすい素材となっています。

ちなみに、この緩衝材を開発する際は、緩衝材評価試験装置ACST-200を利用して緩衝材データを活用しました。

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ドライファイバーテクノロジーを利用して開発された緩衝材

試験装置導入後の感想


竹下様:神栄テクノロジーは包装設計に関する理論的な相談ができることや、試験装置にトラブルが発生しても迅速に対応して頂くことができ、採用してよかったと感じています。 また衝撃試験装置に特許技術の緩衝可変装置があることも、大きなメリットです。当社では損傷境界試験を実施するとき、作用時間の異なる多数の衝撃パルスを用いていますが、簡単に衝撃パルスを調整できる緩衝可変装置は非常に有効です。

神栄テクノロジーに期待すること


竹下様:今後、神栄テクノロジーには、衝撃試験の有効性や輸送包装設計の理論を、さらに包装業界に普及させる活動を進めてもらいたいです。 特に衝撃試験の理論や損傷境界理論は、はじめての人にとっては難しいところが多く、活用したいと思っても途中であきらめてしまう人も多いのではないでしょうか。

衝撃試験は、理解さえできれば広い分野の輸送包装で利用できる技術であると私は感じています。輸送包装に関わる人々がこのような技術を理解し、装置を活用していけば、より適正包装に近づくことが出来ますし、業界全体のレベルアップにも繋がると思います。

今後の神栄テクノロジーの取り組みに期待します。



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