インタビュー
物流事故防止コンサルティングにおける輸送データ計測の重要性

東京海上日動調査サービス株式会社 様(https://www.tas-ajnet.co.jp)では、損害保険に関わる様々な調査業務が行われています。今回は物流事故のコンサルティング業務を専門に長年担当されてきた江松久貴様に、コンサルティング業務の取り組みについてお話しを伺いました。
組織と業務のご紹介
---まずは会社概要とロスプリ&テクノロジー戦略チームの業務について教えてください。
「東京海上日動調査サービス株式会社は、東京海上日動火災保険株式会社のグループ会社であり、損害保険契約に関連した事故や損害の調査、リスク評価、事故原因の特定、保険請求に関する様々な調査業務を行っています。私が所属しているロスプリ&テクノロジー戦略チーム(LTS)は現在34名体制(東京海上日動火災保険株式会社のLTSメンバー含む)で、貨物保険の分野における貨物の輸配送・保管中に発生する破損事故の防止や物流品質の向上につながるアドバイスなど、企業に対して安全やリスクの管理をサポートするコンサルティング業務を提供しています。この業務は、保険商品の付帯サービスの一環として無償提供していることから、様々な分野・業界のお客様から多数のご要望があり、物流事故の削減、物流環境の改善に大変役に立っているとの声を頂戴しています。」

2009年から貨物保険分野におけるコンサルティング業務に従事
物流損害の現状と解決提案
---貨物輸送のなかでは、どのような損害が発生し、どのようにそれを解決しているのでしょうか。
「貨物を海上コンテナ・トラック・航空機等で輸配送する途中で生じる荷崩れ事故、他物との衝突や落下による大きな衝撃などによる貨物破損事故が多くのお客様で発生しています。そのような貨物輸配送事故を防止するため、損害保険会社では過去に保険請求をいただいた多くの事故データや事故写真等を分析し、事故が発生した原因を詳しく究明したうえで、人間工学に基づく知見や、輸配送中に発生する振動衝撃・温湿度データの分析などを駆使しながら、適切な再発防止策をご紹介・ご提案しています。」
---輸送中の振動や衝撃を数値化することは、物流改善にどのように役立っていますか。
「輸配送途中に発生する貨物破損事故のなかには、到着地でコンテナやトラック荷台の扉を開いて初めて発見されるケースが多く見受けられます。「いつ」「どこで」「どのように」事故が発生したのか特定できない状況では、その原因究明が難しいため、適切な再発防止策を講じることができません。そのような場合に、専用の記録計を活用して輸送環境を見える化することで、荷崩れや貨物が破損したタイミング、場所、衝撃の大きさ等を特定・推測することができるようになります。たとえば、貨物輸送において複数の輸送ルートでそれぞれの振動データを数値化できれば、その中から貨物にとって最も安全なルートが選定できます。また路面状況が劣悪な状況を事前にデータで確認できていれば、その道路を走行する場合には、トラックの走行速度を落として運行することで貨物へのダメージを低減するなど、実際の振動・衝撃が数値化できれば、より具体的な改善策をご提案できます。」

輸送環境記録計で数値化されたデータに対して打合せされている様子
より専門的な顧客ニーズに応えるために
---輸送環境記録計が必要となった背景を教えてください。
「精密機器・電子機器・光学機器・半導体・ガラス製品・大型TV(液晶・有機ELパネル)などの製品は、長時間・繰り返しの振動により発生する「共振現象」「疲労破壊」「緩み」などの累積ダメージによって破損することがわかっており、製品に及ぶ衝撃だけでなく振動について、詳細な輸送環境データを希望されるお客様や、梱包設計の合理化を目的として物流事故再現テスト(振動試験)の実施を希望されるお客様など、より精緻に振動・衝撃デ一夕を取得するニーズが増えています。これまでは、衝撃のピーク値(最大加速度)のみを記録する計測機器を使用してデータ計測・分析をしていましたが、上記のような詳細なデータ分析には不向きであったため、輸送環境記録計を導入しました。輸送環境記録計を活用すれば、振動・衝撃のピーク値に加えて、不規則振動波形の厳しさ(加速度実効値)の分析や、各周波数成分の振動強度を示す「パワースペクトル密度(PSD)解析」が実行できます。これにより、衝撃のピーク値のみでは対応が困難であった、周波数領域で他の輸送データと比較・検証や、物流環境再現テストができるようになり、お客様の専門的なニーズにも対応できるようになりました。
神栄テクノロジー(以降、STC)の輸送環境記録計を導入した理由は、STCが輸送環境調査に関わる技術セミナーや技術資料など幅広く情報提供されており、技術面で信頼感が高かったことに加えて、弊社コンサルティング業務に対し、STCが提供している輸送環境調査技術支援サービスを連携することで、より専門的な観点から改善提案ができるようになると考えたためです。」

導入された輸送環境記録計と専用ソフトウェアで解析されたパワースペクトル密度(PSD)解析の一例
コンサルティング業務の今後の展望
---コンサルティング業務について、今後の展望をお聞かせください。
「2024年問題を契機として、モーダルシフト化やダブル連結トラック輸送など物流形態の変革が進んでいる昨今ですが、今後さらに「自動運転トラック」「ドローン・空飛ぶ物流」「自動搬送ロボット(AMR)」など、新しい輸送方法・輸送技術が開発されていく中で発生する新しい事故についても、科学的な検証に基づいて事故原因の分析を行うことができるように、輸送環境の見える化サービスによるデータ集積の継続とともに、常に新技術を調査・導入していくことで、今後もお客様が抱える物流事故の課題解決に貢献していきたいと考えています。このような中で、STCには今後も技術セミナーや技術情報など、様々な情報提供の継続を期待します。」
公開日:2025/6
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