インタビュー
半導体部品の衝撃試験で信頼性の高い受託試験サービスを提供
楠本化成株式会社 エタック事業部 山形試験所 様 (https://etac.jp/)
楠本化成株式会社 エタック事業部 山形試験所様では、信頼性試験に関する様々な受託試験サービスを展開されるなかで、神栄テクノロジーの受託試験サービスとして衝撃試験機をご利用されています。今回、衝撃試験機の具体的な活用内容について、信頼性クリニック 信頼性試験部の猪倉様、大山様にお話を伺いました。
楠本化成株式会社 エタック事業部について
---まずはエタック事業部について、事業内容を教えてください
楠本化成株式会社エタック事業部は、エタックブランドの環境試験器メーカとして、温湿度試験器や温度サイクル試験器などを製造しています。加えて、各種信頼性試験に対応可能な受託試験事業も展開しており、信頼性試験のパートナーとしてお客様の品質確保に貢献しています。このうち受託試験事業は、山形試験所、みずなみ試験所(岐阜県瑞浪市)の2拠点で受託試験サービスを展開しています。みずなみ試験所では自動車部品に特化し、山形試験所は半導体部品を中心として自動車部品にも対応できる体制を構築しています。またいずれの試験所でも、ISO17025試験所認定を取得しており、信頼性の高い受託試験サービスを提供しています。
衝撃試験機を活用することとなったきっかけ
---神栄テクノロジーの受託試験で衝撃試験機を利用することとなったきっかけを教えてください
受託試験事業を展開していく中で、半導体部品メーカから衝撃試験の要望がでてきました。従来は民生品の機器に搭載されていた部品が、自動車にも搭載されていく過程で、厳しい信頼性が求められるようになり、衝撃試験が必要になったことが背景にあります。もともと当社の受託試験メニューに落下衝撃試験はありませんでしたが、半導体試験全般の受託試験を一括して受注するにあたり、衝撃試験ができる試験所を調査したところ、神栄テクノロジーを見つけました。
半導体部品に要求される衝撃試験とは
---半導体部品の衝撃試験ではどのような試験が実施されているのでしょうか
当社では主にJEDEC(ジェデック)試験規格※1の依頼が多くあります。本来、この試験規格は、モバイル機器に搭載されることを想定した半導体部品の衝撃試験規格ですが、車載部品で画一的な衝撃試験規格は見当たらないため、車載部品にも本規格が利用されています。本規格では、1500Gという高加速度の衝撃波形を基板に与えながら、実装部品の瞬断※2を検出する必要があります。当社はJEDEC試験にも対応できる瞬断検出システム※3(ED71)を販売しており、受託試験でもそれを利用して評価を行っています。このシステムの特徴として、瞬断を確実に検知するための超高速サンプリング、落下回数毎に抵抗値を測定できる機能や、常時データを計測できるなど、JEDEC試験に適した機能を有しています。
また、正確な瞬断を検出するためには専用測定器だけでなく、試験サンプルの事前準備も重要です。通常、顧客から送付された試験サンプル(実装基板)は、当社にて抵抗測定用のハーネスの配線作業を行います。このとき、ハーネスの接合部が衝撃で破損や脱落しないように配線する技術や、衝撃によるノイズを抑制するため耐ノイズ性の高い特別なハーネスを利用するなど、当社独自のノウハウがあります。
※1 主な規格番号 JESD22-B111A.01、JESD22-B110B.01 Condition B
※2 衝撃発生時にはんだ接合部が瞬間的に剥がれる状態のこと。JEDEC試験では1,000Ωが1μ秒以上継続したときが瞬断と定義されている
※3 ED71製品紹介サイト (https://etac.jp/product/ed71/)
衝撃試験機活用のメリット
---衝撃試験機をご利用いただいたことで得られた効果や、衝撃試験受託サービスを受けて良かったと感じたことがあれば教えてください。
当社では落下衝撃試験機を保有していないため、神栄テクノロジーの衝撃試験機を活用することで、受託試験のメニューを増やすことができ、お客様に満足いただけるサービスが提供できるようになりました。また、神栄テクノロジーの衝撃試験機を利用してよかったと感じている点は、事前に試験条件を満たすための試験機の調整をしてもらえるため、効率よく試験を実施できることです。JEDEC試験では、1500Gという高い衝撃加速度を発生させますが、このときの衝撃波形の成形には技術ノウハウが必要で、この点を神栄テクノロジーで対応いただけていることは作業面で大変助かっています。顧客によっては、事前に衝撃波形を確認する場合もあるため、正確な衝撃波形が既に出ていれば、すぐに衝撃試験が実施できます。
加えて、試験時には計測機器(ED71)や多数の供試品を持ち込む必要がありますが、試験場所(つくば事業所)へのアクセスの良さもあり、長年にわたり衝撃試験機を活用させていただいています。
今後の取り組みについて
---エタック事業部での受託試験サービスの今後の取り組みについて教えてください。
山形試験所は、現在、受託試験用建屋の拡大工事中で2026年春サービス開始に向けて準備を進めています。最近ではリチウムイオンバッテリーの充放電試験のニーズも高まっており、それに対応できる試験設備や大型振動試験機も順次導入していく計画にあります。このように常に新しい試験ニーズに応えていくことで、受託試験サービスの幅を増やしていきたいと考えています。衝撃試験に関しては、JEDEC試験をさらに効率的に実施するため、瞬断検出システムの新モデル(ED72)を開発しています。これにより、測定器としての使い勝手が大きく向上し、より正確かつ迅速に衝撃試験ができるようになります。
神栄テクノロジーには衝撃試験の受託試験の日程調整や試験準備で協力いただいており、大変助かっています。今後もお互いに衝撃試験に関する様々な技術交流やセミナー開催などを通じて、顧客の抱える課題解決に貢献していければと思います。
※本内容は2025年9月時点の情報に基づいています。
公開日:2025/10
今回採用された試験機
衝撃試験機 HDST-230:詳細仕様はこちら
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