調査前に

輸送環境調査を行う前に、まずは調査目的を明確にする必要があります。

調査目的には、物流品質の確認と改善、基準値以下で輸送しているかのチェック(荷主からの指示)、個別輸送機関で発生する振動の周波数特性の確認、物流トラブルをラボで再現するためのデータ計測、などがあります。

調査目的が明確になれば、どのような仕様の記録計を選択すればいいかが明確になります。

目的別調査方法

輸送環境調査は、目的によって大きく2つの調査方法があります。

①「振動」を計測する場合: 記録計を振動発生源(トラック荷台上、コンテナ床面、パレット上など)に取りつけて計測

振動計測の目的は、包装貨物に下から加わる実振動を記録することです。このとき記録計を包装貨物内に入れて測定すると、緩衝材を介した振動を記録してしまいます。このように計測された振動データは緩衝材が変われば千差万別なため、直接振動源に近い箇所に記録計を取り付けることが望ましいとされています。さらに記録データは振動解析(パワースペクトル密度、PSD)し、振動再現試験を行う場合もありますが、包装内部での計測データから得たPSDでは適切な試験条件とはなりません。

②「落下衝撃」を計測する場合: 記録計を製品側(包装貨物内部)に取りつけて計測

衝撃計測の目的は、荷役作業時に発生する衝撃値を数値化することであるため、記録計は包装貨物内に取りつける必要があります。ここで記録されたデータからどの程度の高さから落とされたかを判定する、「落下高さ」に変換されます。

輸送環境記録計の計測条件設定

輸送環境記録計は、調査開始前にいくつかの計測設定を行う必要があります。ここではモデルDER-1000を対象都市、各項目の意味と一般的な設定値を紹介します。

トリガーモード加速度データ計測方法で、以下の3つの設定ができます。
時間:一定の時間間隔でデータを記録
加速度:一定の加速度を超えた場合のみ、データを記録
Wトリガ:時間と加速度の併用
測定レンジ加速度測定範囲で、以下の4段階で設定が可能
5G, 10G, 25G, 50G
サンプリングレート加速度データを記録するときのサンプリングレート
0.25ms、0.5ms、1ms、2ms、5msから選択可
フレーム加速度データを記録するときの1波形のデータポイント数
512、1024、2048、4096から選択
計測インターバル加速度データを記録するときのインターバル(記録しない時間)の設定

①振動計測設定

トリガーモード時間(あるいはWトリガ)
測定レンジ10G(海外は25G)
サンプリングレート1ms
フレーム1024
計測インターバル輸送期間から算出

②衝撃計測設定

トリガーモード加速度         
測定レンジ50G
サンプリングレート0.5~1ms
フレーム1024~2048
計測インターバル0秒

輸送環境データ解析

PSD(パワースペクトル密度)

輸送環境記録計に記録された時刻歴加速度波形から、周波数領域に変換する解析手法。PSDは、横軸に周波数、縦軸に周波数成分の大きさを示しています。したがって、PSDをみれば、時刻歴加速度波形にどの周波数成分が多く含まれているか、少ないかが理解できます。たとえば、ある時刻歴は軽をPSD解析した結果、3Hz付近にピークがあるような結果が得られたとすると、その解析元となった時刻歴は軽には、3Hzの周波数成分が多く含まれている(≒その周波数の振幅が大きい)ことがわかります。

PSDは、ランダム振動試験の試験条件としても用いられます。たとえば、JISZ0200:2013 包装貨物-性能試験方法一般通則に試験用PSDが規定されています。ただし、JISZ0232包装貨物-振動試験方法には、流通条件によってPSDは変化するため、実測データに基づくPSDを用いることが望ましいとの記載もあり、実際の振動データをもとにPSD解析する取り組みが、各所で実施されています。

なお、PSD解析は、時系列加速度波形が解析元データとなりますので、この解析を行いたい場合は、それが可能な記録計であるかを確認しておくことが重要です。

落下高さ解析

落下高さ解析手法は、3つに大別されます。

①自由落下時間算出法:自由落下時に発生する重力加速度の起こりと衝突直前の時間を抽出し、その時間を落下高さ計算式に代入することで落下高さを推定する方法。自由落下以外の衝撃波形(重力加速度の起こりが無い波形)においては、落下高さ解析はできない。

②速度変化算出法:加速度波形の面積(速度変化)から、落下高さを推定する方法。自由落下以外の衝突のような衝撃波形からも落下高さが算出できる。ただし解析時には緩衝材の反発係数が必要なため、事前に反発係数を同定するための事前試験が必要。

③ピーク加速度変換法: 記録したピーク加速度から落下高さを推定する方法。事前に落下試験にて、落下高さ毎の発生加速度を記録しておき、そのテーブルを用いて、物流環境で記録したピーク加速度を落下高さに変換する。

上の①②については、PSD解析と同様に、時系列加速度波形が必要となります。③については、モニタリング用記録計でも代用可能ですが、ピーク値を正確にとらえるために、比較的早いサンプリング設定(1ms程度)が必要です。