人手による落下試験の問題点とは?

落下試験の主な対象品と評価の目的

落下試験とは、物体をある試験高さから自由落下させることで、落下に対する耐衝撃性能を評価する試験です。主な試験対象品は目的によって次のように2つに区分できます。

製品落下  
対象品の一例 スマートフォン、タブレットPC、ノートパソコン、デジタルカメラ、ほかモバイル機器全般)など
目的  製品使用中に発生する落下事象を想定し、製品自体が要求される耐衝撃性を持っているかを評価する
公的規格 JISC60068-2-31 環境試験方法-電気・電子-第2-31部:落下試験及び転倒試験方法(試験記号:Ec) など
包装貨物落下  
対象品の一例 包装貨物全般(製品と緩衝材が入った段ボール箱)、パレット貨物、大型木枠梱包品など)
目的  貨物輸送中に発生する落下衝撃を想定し、包装貨物(緩衝材料)が問題なく製品を保護できていることを評価する
公的規格 JISZ0202 包装貨物-落下試験方法 など

試験対象物の落とし方

落下試験は、現場的には人が手で落とす試験と、落下試験機を利用した試験が行われています。

人が手で落とす場合の問題点

人が手で落下させる試験の場合の特徴として、落下対象品に生じる衝撃値に大きなばらつきが生じることがあります。下の図は、段ボール箱内部に加速度センサを設置したダミー箱を用意し、人が手で落とした場合と、落下試験機で落下させた場合で、それぞれ5回繰り返し落下させたときの衝撃波形を示しています。写真は高速度カメラで撮影した動画からのキャプチャです。

この衝撃波形の図をみると回数ごとに衝撃波形に大きなばらつきが生じている一方で、落下試験機を用いた試験では、ほぼ同じ衝撃波形であることがわかります。この違いは、貨物の床面への衝突時の姿勢(傾き)が最も影響しています。人が手で落とすと、貨物が傾いて落下しやすく、さらに回数によって、この傾きの大きさも変化することが、衝撃値のばらつきの要因となっています。

このことは、「JIS Z0200:2017 包装貨物-落下試験方法 7 試験方法 1)落下姿勢の設定」において、「貨物の水平度は±2度とし、落下面に衝突するときの水平度も±2度以内が望ましい」との記載もあることから、落下時の姿勢の安定性を確保することの重要性が理解できます。

このような結果のばらつきは、製品・包装設計の品質に直結します。再現性の低い結果だけをみて、設計の合否判定してしまうと、実際の流通過程や使用環境のなかで衝撃による破損が生じる可能性が考えられます。

正しい設計評価のために

落下衝撃に対する正しい設計評価を行うためには、だれが、いつ、どこで実施しても同じ環境を再現できる、落下試験機を利用することが重要になると考えられます。
落下試験機の詳細は下記をご参照ください。