包装貨物落下試験における衝撃加速度計測
包装貨物落下試験とは
包装貨物は、物流環境(特に荷役作業時)の落下に遭遇することで、内容品や外装箱の破損が生じている。
このような環境において予想される落下に対し、内容品を保護するために、緩衝包装設計が必要とされる。ここでは実際に製品を流通させる前に、包装材料の緩衝機能に問題ないかどうかを確認するため、包装貨物落下試験が行われている。
当試験では、包装貨物落下試験機を用いて、包装貨物を一定の落下高さから任意の方向で自由落下させたのち、内容品に不具合がないかを確認する。もし内容品に問題が生じた場合は緩衝包装設計の見直しを行い、再試験を行う。このように出荷前段階において、落下試験により包装設計を事前評価することで、実際の物流環境で生じる落下衝撃による不具合発生リスクを減らすことができる。
包装貨物落下試験は、JISZ0200、JISZ0202に基づき、試験実施されることが多い。なお、JISZ0202によると、供試品の設置および落下姿勢は2°以内にすることが望ましいとあり、これは落下時の貨物の角度が変わることで内容品に生じる衝撃加速度が大きく影響する(一般的に貨物の落下角度が大きいほど、内容品に発生する衝撃値は低減する)ためである。このような貨物の落下姿勢のばらつきを抑制するために、落下試験機が用いられている。
加速度計測機器の種類と特徴
緩衝包装設計は、落下試験時に内容品に生じる加速度が、損傷境界曲線から得られる許容加速度以下になるように設計することで、保護機能を確実にする。
ここで、内容品に発生した衝撃値が、許容加速度以下であることを明らかにするため、加速度計測が行われる場合がある。このとき利用される計測器は大きく2つに分類できる。
1つは、発生した衝撃加速度波形をすべて取り込みながら、PCソフトウェア上で様々な解析を行うことができる加速度計測システムである。この機種の特徴として、加速度ピックアップを用いた測定となるため、測定対象に応じてピックアップレンジを自由に選択できることと、ピックアップ自体は小型サイズであるため、幅広い対象物の測定に向いている。また測定データは、リアルタイムにPCソフトウェア上に表示され迅速な確認が可能となる。また同ソフトウェア上では、3軸合成処理、フィルタリング、SRS解析など様々な波形処理を行うことができるため、単に衝撃加速度波形を確認するだけでなく、衝撃波形の潜在的なダメージ評価など応用的な使い方ができる。
他方は、発生した最大加速度のみを記録する衝撃ロガー(±200Gまで記録、3軸方向)である。本ロガーは、無線通信機能を有することから、梱包状態のままでもスマホにデータダウンロードができる。加速度ピックアップは有線でハードウェアに取り込む必要があるため、落下試験時に配線の配慮、ケーブル破損による定期交換が必要となるが、本ロガーは無線通信となることからストレスフリーな落下試験が期待できる。ただし本ロガーは最大加速度のみを記録する仕様であるため、加速度計測システムのような応用解析には不向きであることと、ロガー自体がある程度大きいため、小型製品の衝撃計測には適さない。
以上のような測定器を対象物や用途に応じて使い分けることで、包装設計の品質向上が期待される。